OL数人で企画、地方に落語家を呼ぶ会も
カフェや、レンタルスペースとなっている古民家、小さなホールなどを会場とした落語会は、都内はもとより各地で開催されています。落語の会の開催が少ない地域から東京に旅行に来たOLが、寄席に立ち寄り、その際に心ひかれた落語家を友人らと協力して地元に呼ぶ、といった小さな会も開催されているといいます。
小さな会場を借りて、自分の趣味や企画で顔付け(出演メンバー)を決め、それを喜んでくれる客を集めて落語会を開催する「プチ席亭」は、落語ファンにとっては夢のような経験でしょう。
このように落語の会がよりカジュアルな、ファンに身近なものになってきた背景には、落語界のある事情がありました。
圧倒的に足りない「定席」の数
現在、東京都内の主な「定席(常設の寄席)」は、上野の鈴本演芸場、新宿末廣亭、池袋演芸場、浅草演芸ホールの4カ所です。
都内には落語家の協会、組織が4つありますが、所属する芸人がこの4カ所すべてに出演できるのは落語協会(真打・二ツ目を合わせて約260人が所属)だけであり、鈴本演芸場を除く3カ所に出られるのが落語芸術協会(同約140人)です。落語立川流(同約40人)と円楽一門会(同約50人)は、この4カ所には出演できません。そのほか、国立演芸場、お江戸上野広小路亭、お江戸日本橋亭、お江戸両国亭などでそれぞれ定席興行が行われています。
組織によって状況は異なるものの、いずれにしても近年の落語人気に支えられ、増加した落語家の数に比べて、定席の数は圧倒的に足りていません。
例えば、落語芸術協会副会長で笑点のメンバーでもある三遊亭小遊三さんが前座の頃(1969年)は、同協会(当時は日本芸術協会)所属の落語家は、二ツ目から真打トップの会長まで合わせてわずか40人だったそうです(『東京かわら版平成28年1月号』)。1つの組織をみただけでも、約50年後の現在、落語家の人数は3.5倍、100人も増えているのです。
人気のある真打の中には、公会堂やホールで開催される「ホール落語」や地方での営業に引っ張りだこ、という人もいますが、伝統的な寄席のプログラムの構成上、出演枠が極めて少ない「二ツ目」の状況は深刻です。それぞれ、小さな会を開催するなどしていますが、「一回でも多く高座に上がって、勉強したい」と願う若手の落語家が相当数いるという状況が続いているのです。
NIKKEI 2016年5月30日より引用